
まだ調味料(アミノ酸等)使ってるの?
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YouTube動画 #77の補足です。
私が子供の頃、1960年〜70年代前半くらいですが、まだまだ日本は成長の途上であり食品も今から思うとあやしげなものが多かった時代です。
たとえば、果汁なんかまったく入っていなくても甘酸っぱくてオレンジ色に着色されていたらオレンジジュース、紫色で甘いのがグレープジュース。喫茶店で子供向けの飲み物といえばそんなかんじで、大抵正体はファンタオレンジやファンタグレープでした。
お菓子には人工甘味料や着色料が使われて、食べると舌が真っ赤になるような飴とか、なんか色々ありました。
一方で公害問題などもあちこちで明らかになっていて、私は小学生の間は川崎市に住んでいましたが、鷺沼プールに遊びに行くと「光化学スモッグ情報」の看板があって、ABCの3段階だったと思うけどCになるとかなりスモッグが出るということでそう言われると目がしょぼしょぼしたり頭が痛くなったりした覚えがあります。
そんなことで徐々に環境とか食の安全みたいなことが世間で言われるようになって、例えば人工甘味料のチクロが使用禁止になり、甘味料が変わったらガムが落とすと割れるようになった記憶があるんですが、これはなにかの勘違いかもしれないです。
それから果汁100%じゃないとジュースと言ってはいけない、ということになってファンタオレンジやファンタグレープをオレンジジュース、グレープジュースとは言わなくなりました。さっきネットで検索してみたらこのジュースの厳密化というのは1971年の公正取引協議会で制定されたそうなので、私が小学校2年か3年のときという記憶にも合っています。
つまり、当時はまだ「紛い物」がそれなりに流通していた、ということなんですね。
その後の1980〜1990年代のようにものが溢れて競争が激化した時代と違い、需要の方が供給より大きかった、なんでも出せばそれなりに売れた時代だったということなんだと思います。
そんな時代なので、原材料だってぴんきりだったわけで、農産加工品にしろ畜肉加工品や水産加工品も添加物がいっぱい入っていて、その多くの理由は「原価を下げるため」です。また、原材料の品質もまちまちだったので、出来上がりのブレを気づかれないようにするためにも添加物は有用だったんだと思います。
だから、80年代、90年代と栽培方法や流通が発展して、原材料の品質を安定させることができるようになり、輸入も含めれば量的にも確保できた時代のどこかでそういうものづくりから卒業することができたのではないかと思うのですが、実際にはバブル崩壊の後の価格破壊ブームのせいなのか、1990年に300円で売れていたものを150円にするためにあらためてグレードを下げた商品を開発することがもう一度行われ、進んだ技術をコストダウンに向ける競争が始まってしまいした。
70年代に残っていた貧しさから卒業することはできなかったわけです。
なのでスーパーマーケットには今も棚一面に商品が並んでいるのですが、視点を変えると全部同じに見えてしまう現象が今も続いています。
例えば、ビールのつまみにたまにはポテトチップスが食べたいな、と思ったとします。というか、先日ほんとうに思い立って近所のコンビニや小さめのスーパーに行ってみました。私は塩で味をつけた普通または薄塩くらいのポテトチップスが欲しかったのでスナック菓子売り場に行きました。で、商売柄袋をひっくり返して原材料表示を見るのですが、かならず「調味料(アミノ酸等)」の表示があるものばかりでした。いや、アミノ酸いらないし、と思うと買うものがない。最終的にまいばすけっとに売っていたイオンのPB、トップバリュブランドの「塩だけで味付けしたポテトチップス」というのを見つけたのでそれを買ってきましたが、お店によっては「調味料(アミノ酸等)」の表示がないものは1品もない、ということが多いんです。
ポテトチップスに限らず、その他のスナック菓子、レトルト食品、惣菜、ソースやたれなどの調味料などその多くの分野で判で押したように「調味料(アミノ酸等)」の表示があります。
いちいちスーパーに行って全部袋をひっくり返すのも気が引ける、というかたは大手の通販サイト、Amazonでもいいです。一部例外はありますが、Amazonの商品紹介のところにはたいてい「原材料表示」を書き写した情報が並んでいるので、たとえば「ポテトチップス」と検索して出てくる商品の原材料表示をチェックしてみてください。通販なので一番上には無添加をうたう消費が出てきますが、スーパーマーケットで見かけるものも大抵出てきますので、それをチェックしてみるとわかります。やはり判で押したように「調味料(アミノ酸等)」の表示があります。
私は調味料にしても甘味料にしても添加物の「安全、危険」の話はしません。証明しようとしてもそれこそ原発事故の放射能と同じで「ただちに健康被害が出るものではない」し、病気になったからといってこの添加物のせいだ、という証明することは難しいと思うからです。ただ、添加物がたくさん入る商品開発には1960年代的貧しさを感じるので賛成できません。
YouTubeでもたびたび話のついでに申し上げていますが、ちゃんとした原料を使い、ちゃんと管理しながらものを作れば素材の味が生きた食品が作れるはずです。ただ大量生産品を常に同じ味、色、形状でたくさん作り続けようと思うとどうしても原料ごとのブレなどで出来上がりが違ってしまう。本当は「そういうものだ」と開き直っても良いと思うのですが、サラリーマン組織の中でそれを許容するのは難しいのでしょう。今やうまみすら数値で測れるそうなので、新製品を採用するにしても「過去の製品に比べて数値はどうなのか?」「競合他社製品と比べて数値的にどうなのか?」と会議で聞かれた時に「添加物を減らしたので数値は下がっています」という企画にハンコを押してもらえるのかを考えると、強迫観念としてうまみを転嫁せざるを得ないような隘路にはまってしまっているのではないかと思ってしまいます。
当店ではそういう競争から離れたところでおいしくてちゃんとしているものを選んで扱っているつもりです。